貿易展望だよりNO.12役務取引の条文を二つ (2015年8月)
役務取引の条文は、貨物のそれと違いイメージしづらい分だけ、難しいかもしれません。そこで、今号では、皆さんがよく目にする以下の二つ条文を取り上げ、解説することにしました。
1.・・公知とする取引を除く
この文章は、以下の貿易外省令第9条第2項第九号に出てきます。
「九 公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する取引(特定の者に提供することを目的として公知とする取引を除く。)であって・・(以下、省略)」
さて、皆さんは、「公知の技術」は輸出規制の対象外であることはご存知と思います。これに加えて「技術を公知とするために当該技術を提供する取引」も規制対象外となりますが、これには除外規定が付いています。これが括弧の中に示されている条文です。
この除外規定は、関係法令集で言えば17版以前には、存在せず、18版以降になって出てきます。即ち、17版以前では、ホームページ(以下、HP)に当該技術が掲載されれば、その時点で公知とされ、規制対象から外れていました。しかし、そうであれば、取引相手、即ち、特定の者と打ち合わせて一瞬HPに掲載すれば、規制から逃れられることになります。そこで、この様なことがないよう法の網が被せられたというのが、この除外規定の主旨といえるでしょう。
換言すれば、特定の者に提供したのでは、公知の技術にはなりません。「不特定多数の者が入手可能な技術」でないと、規制対象外とはならないということです。
2.専ら・・係る技術
「もっぱらかかるぎじゅつ」と読みます。これは貨物等省令第28条に「専ら・・係る技術」と規定されており、その解釈が役務通達別紙1に、以下のごとく、示されています。即ち、「別1(注)の16 の項に該当する貨物以外の貨物に適用できる技術以外のもの」。
換言すると、16 の項に該当する貨物の専用技術を規制するものであり、16 の項に該当する貨物に係る技術であっても、16 の項に非該当な貨物にも適用できる技術は規制されないことになります。
このような書き振りは、外為法体系の随所に出てきます。いうまでもなく、法律は誰が読んでも同じ意味に到達できねばなりません。即ち、我々の日常会話と違い、白黒をはっきりせねばならない宿命があります。その結果、こういう表現になったものと、私は考えています。
注:輸出貿易管理令別表第1を略して別1と称しています。
以上
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役務取引の条文は、貨物のそれと違いイメージしづらい分だけ、難しいかもしれません。そこで、今号では、皆さんがよく目にする以下の二つ条文を取り上げ、解説することにしました。
1.・・公知とする取引を除く
この文章は、以下の貿易外省令第9条第2項第九号に出てきます。
「九 公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する取引(特定の者に提供することを目的として公知とする取引を除く。)であって・・(以下、省略)」
さて、皆さんは、「公知の技術」は輸出規制の対象外であることはご存知と思います。これに加えて「技術を公知とするために当該技術を提供する取引」も規制対象外となりますが、これには除外規定が付いています。これが括弧の中に示されている条文です。
この除外規定は、関係法令集で言えば17版以前には、存在せず、18版以降になって出てきます。即ち、17版以前では、ホームページ(以下、HP)に当該技術が掲載されれば、その時点で公知とされ、規制対象から外れていました。しかし、そうであれば、取引相手、即ち、特定の者と打ち合わせて一瞬HPに掲載すれば、規制から逃れられることになります。そこで、この様なことがないよう法の網が被せられたというのが、この除外規定の主旨といえるでしょう。
換言すれば、特定の者に提供したのでは、公知の技術にはなりません。「不特定多数の者が入手可能な技術」でないと、規制対象外とはならないということです。
2.専ら・・係る技術
「もっぱらかかるぎじゅつ」と読みます。これは貨物等省令第28条に「専ら・・係る技術」と規定されており、その解釈が役務通達別紙1に、以下のごとく、示されています。即ち、「別1(注)の16 の項に該当する貨物以外の貨物に適用できる技術以外のもの」。
換言すると、16 の項に該当する貨物の専用技術を規制するものであり、16 の項に該当する貨物に係る技術であっても、16 の項に非該当な貨物にも適用できる技術は規制されないことになります。
このような書き振りは、外為法体系の随所に出てきます。いうまでもなく、法律は誰が読んでも同じ意味に到達できねばなりません。即ち、我々の日常会話と違い、白黒をはっきりせねばならない宿命があります。その結果、こういう表現になったものと、私は考えています。
注:輸出貿易管理令別表第1を略して別1と称しています。
以上
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