貿易展望だよりNO.47貿易実務と安全保障貿易管理(2017年3月)
本たよりの読者の皆さんは、殆どの方が貿易実務(以下、実務)を勉強或いは経験された後、その延長線上で、安全保障貿易管理(以下、安貿)に取組まれているものと推察致します。さて、このようにして、安貿の勉強を始めますと、実務とはどうも勝手が違うな・・と感じられたのではないでしょうか。実は私もそう感じていましたので、まず、以下のごとく、主な相違点を挙げ、次に、後述の添付図を参照しながら、輸出法令の仕組み並びに安貿への取組み方に言及していきたいと思います。例により、貨物を前提に話を進めます。技術については貨物に準じてお考えください。
1.主な相違点
1)根拠規則又は根拠法
➀実務の場合
この場合は、法律ではなく国際規則であるINCOTERMS 2010と信用状統一規則(UCP600)が主な根拠となります。INCOTERMS 2010は2011年1月以降、改正されていませんし、UCP600に至っては2007年7月の発効以来、一度も改訂されていません。
いうまでもないことですが、契約当事者、例えば、売り主と買い主が上記二つの国際規則に従う旨、合意せぬ限り、当該契約に拘束されることはありません。
➁安貿の場合
根拠法は、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)以下の政省令です。詳しくは、添付図の「安全保障輸出法令の仕組み」をご参照願います。具体的には、国際輸出管理レジーム(注2)の毎年の会合で合意された結果により、外為法以下の政省令が改正され、通常、年末に開催される政省令等改正の説明会等で、その詳細が解説されていることはご承知の通りです。因みに、外為法の改正は数年に一度(前回は平成26年6月)であり、その間は政省令の改正で対応することになります(注1)。
重要なことは、我々は法律を遵守せねばなりませんので、外為法を読んでいなかったとか知らなかった・・との言い訳は効かないということです。従って、契約は政府許可条件で締結する必要があります。換言すれば、輸出許可を申請した場合、それが該当する政省令に合致しているかどうかの判断は経産省が持っていますので、我々は決して独断しないことが肝要です。いささかでも判断に迷う場合は、安全保障貿易審査課等に相談されることが望まれます。
2)根拠規則又は根拠法がカバーする範囲
実務の場合は、カバーするの範囲が定められている訳ではありませんので、範囲の定義はありません。一般に、その中心となるのは前述のINCOTERMS 2010とUCP600となりますが、貿易実務書の著者により、そのカバーする範囲は異なってきます。一方、安貿の場合、法律ですので当然といえば当然ですが、規制の範囲は外為法以下の政省令で明確に規定されています。
2.では、どう安貿に取組むか
上述のごとく、実務と安貿を比較することにより、安貿の輪郭が多少は把握しやすくなったのではないかと思います。実務への取組み方については、既に勉強されていると思いますので、ここでは省略させて戴いて、最後にどう安貿に取組んでいったら良いかを述べてみましょう。具体的には、1,100ページ余りもある関係法令集改訂第22版にどう取り組んでいったら良いかということになります。
1)関係法令集を購入したら、とにもかくにも同封されているタグを関係法令集に貼ることです. 2)何か問題が発生する毎に、関係法令集の該当箇所を読むと共に、その該当箇所が添付図(関係法令集P17に掲載)の何処に該当するかをチェックしていってください。なお、添付図に外為法以下の政省令の省略名を書き込んでおきましたので、参考にしてください。
3)このような作業を何度も繰り返すことにより、安貿の全体像が把握できるようになると思います。下手な参考書を参照するより、直接条文にぶつかっていった方が判り易い場合が多々あります。
3.法律条文の癖
「何度も繰り返すことにより、安貿の全体像が把握できるようになる」・・と簡単に申し上げましたが、この点が最もキツイところでしょう。法律条文には、特有の癖があります。それは法律とは白黒(例えば、有罪か無罪かとか該当か非該当か)を峻別するためのツールだということです。従って、法律家は条文の判り易さを目指している訳ではありません。彼等はなく、白黒のつかない文章は、基本的には、書きませんので、必然的に回りくどくなります。そういうものだと思って、慣れていく以外にないと考えます。
注1:現在開催中の第193回通常国会に、「外為法の一部を改正する法律案」が提出される運びになっています。本年3月3日付けの経産省公表によれば、以下の措置を講じるとされています。
1)輸出入・技術取引規制における罰則の強化、2)輸出入規制における行政制裁等の強化、3)対内直接投資規制の強化。 注2:国際輸出管理レジームとは、WA(WASSENAAR ARRANGEMENT)、NSG(NUCLEAR SUPPLIERS GROUP)、AG(AUSTRALIA GROUP)、及びMTCR(MISSILE TECHNOLOGY CONTROL REGIME)をいいます。WAは毎年貨物の仕様を中心に毎年改正されますが、他のレジームはそうではありません。従って、毎年の政省令等改正の説明会は、WAの説明が殆どです。なお、各レジームの説明は、CISTECのHP或いは、私のHPに掲載の「読む字引・・安全保障とその周辺」をご参照ください。
本たよりの読者の皆さんは、殆どの方が貿易実務(以下、実務)を勉強或いは経験された後、その延長線上で、安全保障貿易管理(以下、安貿)に取組まれているものと推察致します。さて、このようにして、安貿の勉強を始めますと、実務とはどうも勝手が違うな・・と感じられたのではないでしょうか。実は私もそう感じていましたので、まず、以下のごとく、主な相違点を挙げ、次に、後述の添付図を参照しながら、輸出法令の仕組み並びに安貿への取組み方に言及していきたいと思います。例により、貨物を前提に話を進めます。技術については貨物に準じてお考えください。
1.主な相違点
1)根拠規則又は根拠法
➀実務の場合
この場合は、法律ではなく国際規則であるINCOTERMS 2010と信用状統一規則(UCP600)が主な根拠となります。INCOTERMS 2010は2011年1月以降、改正されていませんし、UCP600に至っては2007年7月の発効以来、一度も改訂されていません。
いうまでもないことですが、契約当事者、例えば、売り主と買い主が上記二つの国際規則に従う旨、合意せぬ限り、当該契約に拘束されることはありません。
➁安貿の場合
根拠法は、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)以下の政省令です。詳しくは、添付図の「安全保障輸出法令の仕組み」をご参照願います。具体的には、国際輸出管理レジーム(注2)の毎年の会合で合意された結果により、外為法以下の政省令が改正され、通常、年末に開催される政省令等改正の説明会等で、その詳細が解説されていることはご承知の通りです。因みに、外為法の改正は数年に一度(前回は平成26年6月)であり、その間は政省令の改正で対応することになります(注1)。
重要なことは、我々は法律を遵守せねばなりませんので、外為法を読んでいなかったとか知らなかった・・との言い訳は効かないということです。従って、契約は政府許可条件で締結する必要があります。換言すれば、輸出許可を申請した場合、それが該当する政省令に合致しているかどうかの判断は経産省が持っていますので、我々は決して独断しないことが肝要です。いささかでも判断に迷う場合は、安全保障貿易審査課等に相談されることが望まれます。
2)根拠規則又は根拠法がカバーする範囲
実務の場合は、カバーするの範囲が定められている訳ではありませんので、範囲の定義はありません。一般に、その中心となるのは前述のINCOTERMS 2010とUCP600となりますが、貿易実務書の著者により、そのカバーする範囲は異なってきます。一方、安貿の場合、法律ですので当然といえば当然ですが、規制の範囲は外為法以下の政省令で明確に規定されています。
2.では、どう安貿に取組むか
上述のごとく、実務と安貿を比較することにより、安貿の輪郭が多少は把握しやすくなったのではないかと思います。実務への取組み方については、既に勉強されていると思いますので、ここでは省略させて戴いて、最後にどう安貿に取組んでいったら良いかを述べてみましょう。具体的には、1,100ページ余りもある関係法令集改訂第22版にどう取り組んでいったら良いかということになります。
1)関係法令集を購入したら、とにもかくにも同封されているタグを関係法令集に貼ることです. 2)何か問題が発生する毎に、関係法令集の該当箇所を読むと共に、その該当箇所が添付図(関係法令集P17に掲載)の何処に該当するかをチェックしていってください。なお、添付図に外為法以下の政省令の省略名を書き込んでおきましたので、参考にしてください。
3)このような作業を何度も繰り返すことにより、安貿の全体像が把握できるようになると思います。下手な参考書を参照するより、直接条文にぶつかっていった方が判り易い場合が多々あります。
3.法律条文の癖
「何度も繰り返すことにより、安貿の全体像が把握できるようになる」・・と簡単に申し上げましたが、この点が最もキツイところでしょう。法律条文には、特有の癖があります。それは法律とは白黒(例えば、有罪か無罪かとか該当か非該当か)を峻別するためのツールだということです。従って、法律家は条文の判り易さを目指している訳ではありません。彼等はなく、白黒のつかない文章は、基本的には、書きませんので、必然的に回りくどくなります。そういうものだと思って、慣れていく以外にないと考えます。
注1:現在開催中の第193回通常国会に、「外為法の一部を改正する法律案」が提出される運びになっています。本年3月3日付けの経産省公表によれば、以下の措置を講じるとされています。
1)輸出入・技術取引規制における罰則の強化、2)輸出入規制における行政制裁等の強化、3)対内直接投資規制の強化。 注2:国際輸出管理レジームとは、WA(WASSENAAR ARRANGEMENT)、NSG(NUCLEAR SUPPLIERS GROUP)、AG(AUSTRALIA GROUP)、及びMTCR(MISSILE TECHNOLOGY CONTROL REGIME)をいいます。WAは毎年貨物の仕様を中心に毎年改正されますが、他のレジームはそうではありません。従って、毎年の政省令等改正の説明会は、WAの説明が殆どです。なお、各レジームの説明は、CISTECのHP或いは、私のHPに掲載の「読む字引・・安全保障とその周辺」をご参照ください。
http://www.bouekitenbou.com/no47-36031261312345521209123922343320840204453855636031261313164929702.htmlNO47 貿易実務と安全保障貿易管理